ニュース

慢性腸疾患の犬における糞便中短鎖脂肪酸濃度の臨床的意義を考えた研究

投稿者:武井 昭紘

近年、人医療および獣医療において、腸内細菌叢と様々な疾患(肥満、アトピー、腸疾患など)との関連性に焦点を当てた研究が進められており、体調管理・健康維持のためには、この細菌叢のコントロールが大変に重要であると考えられるようになってきた。故に、裏を返せば、糞便検査等を用いて腸内細菌叢の変化を具に分析する手法が確立されれば、分類が曖昧であったり、類症鑑別が困難な病気にさえも明確な診断が下せるという仮定を充分に立てることができ、腸内細菌学は、今後の発展が大いに期待できる一分野と言って過言ではない。

そのような背景の中、テキサスA&M大学は、消化器疾患を有するヒトで低下する糞便中短鎖脂肪酸(Short-chain fatty acids、SCFAs)濃度に着目して、①臨床上健康な犬と②慢性腸疾患(chronic enteropathy、CE)に罹患した犬における糞便中SCFAs濃度を比較する検証を行った。なお、検証の結果、①に比べて②では、酢酸、プロピオン酸、総短鎖脂肪酸の何れも有意に低下していることが明らかとなったとのことで、同大学は、腸内細菌が炭水化物を発酵させることで生じる代謝産物である糞便中SCFAs濃度の低下をもって、②では「dysbiosis」、つまり、多様性(細菌種と数)の減少が起きていると結論づけている。

上記のことから、糞便中SCFAs濃度は、犬のCEの鑑別および治療方針の決定(プレ・プロバイオティクスの必要性の判定)に、有用な情報を与えてくれるものと思われる。よって、将来的に、糞便中SCFAs濃度測定法が商業化され、慢性的な消化器症状で悩む犬とそのオーナーが激減することを期待している。

糞便中SCFAs濃度を応用して、それぞれの犬に獣医学的に合ったフードを「診断する」方法が開発されることも願っております。

 

参考ページ:

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/31099928


コメントする