インタビュー

<海外レポート>米国に学ぶオオカミ論  

米国に学ぶオオカミ論【Mission;Wolf】

日本に野生のオオカミはもう居ないと言われている。

私の幼いころ、理科の教科書では日本自然生態系の頂点(捕食者)はクマと猛禽類であり、それらは下層のシカやイノシシなどを捕食し日本の自然は成り立っていると書いてあった。

クマはまず雑食性の動物であり、猛禽類は肉食性とはいえシカの数をコントロールできるほどのプレデターではない。子供ながら何故捕食者にオオカミが居ないのか違和感を感じていた。(後程、野生オオカミはすでに絶滅したと知った。)

今日、頂点捕食者(ここではオオカミを指す)がいない日本では、二ホンジカ、エゾシカ、イノシシ、ニホンザル等による農業被害が年々増え続けているため、一部の研究者の間では日本の自然生態系にオオカミを再導入し、生態系のバランスを元に戻すべきだという意見があります。(賛否両論ありますが。)

しかし現在日本には野生のオオカミはおらず、オオカミについて詳しく知りたくても動物園以外で学べる場がありません。そのため、オオカミ再導入によって自然生態系のバランスを取り戻したアメリカでオオカミのことを学ぼうと思い、1か月実習に行ってきました。
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【Mission;Wolfでの暮らし】

私が滞在したのは、コロラド州南部のサン・イザベル公園の近くにある「Mission;Wolf」。Mission;Wolfは言わばオオカミしかいない、動物園に近い施設でした。毎日、オオカミの世話(餌やり等)、観光客とオオカミに関するお話をするという日々が続きます。

また、市内でのMission;Wolfスタッフが行う、オオカミに関するレクチャー講演会のお手伝いなど、毎日幅広い業務をこなしました。

私は施設に行く前からアメリカの野生オオカミによる家畜被害のニュースを聞いていて、オオカミを嫌う人が大半という印象を持っていました。しかし、観光客はオオカミに関して博識で、オオカミを実際に一般家庭で飼育している人もおり、嫌悪派ばかりではないと知りました。

施設で過ごすなかで、アメリカ全体ではオオカミ嫌悪派と寛容派が半々ずつという印象に変わりました。また、日本よりオオカミが身近な存在であると感じることが多くありました。

【アメリカと日本自然観の違い】

アメリカ人は基本的にカトリックの精神を持っている,
具体的に言うと、我々は神から自然を支配する権利を与えられたという観念を持っているのではないでしょうか。そのため実際に自然生態系をどうコントロールすべきか、観光客1人1人が明確な意見を持っているよう感じました。

日本仏教では、万物に八百万の神が宿っているという潜在的な考えを持っています。人間は犬猫牛豚だけではなく、植物も等しく同じ「1つの命」という考えのことです。そういうわけでアメリカ人と日本人の自然観は大きく異なっていました。

【日本でオオカミ再導入ができるのか】

オオカミ再導入だけで日本自然生態系が回復するとは私は思いません。実際1995年にオオカミ再導入が行われたイエローストーン国立公園でも、自然生態系が回復した要因に下記を挙げています。

・自然管理者(レンジャー、狩猟者、研究者等)の手で公園内が整備された
・地球温暖化により草食獣(エルク)が餌とする草木の多様性が減少していた
・近年のグレズリー、コヨーテ等の肉食獣の個体数増加

まず狩猟者だけでなく自然管理者の数を増やしもっと人々に今の日本の自然状況を知ってもらわなければならないと思います。

最後に、Mission;Wolfは基本寄付金だけで運営しているという話でした。日本では野生動物を飼育する施設で、このようなことを聞いたことがありません。それほど自然生態系、特にオオカミに関して関心を持っている人が多いという証拠だと思います。こうしたことから、オオカミ再導入がアメリカで進んだのではないかと感じました。

私は学んだことを活かし、今後は学生の立場ではありますが多くの人、とくに都市部の人々にオオカミや自然生態系の回復に関心を持ってもらえるような活動をしていきたいです。

<記事作成者> 学生記者 鳥本 亮太

Mission;Wolfでのオオカミと観光客

Mission;Wolfでのオオカミと観光客

Mission;Wolfの看板

Mission;Wolfの看板

Mission;Wolfのオオカミ

Mission;Wolfのオオカミ

 

 

 

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