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パルボウイルスに感染して腸炎を起こした犬に対する抗ウイルス薬の効果

投稿者:武井 昭紘

犬のパルボウイルス感染症は世界的に問題となっている致死的な病気であるが、ウイルスに直接働きかける有効な治療法はな無く、対症療法や支持療法を適応するしかないのが現状である。一方、ヒトや猫のウイルス感染症では抗ウイルス薬を使用する場合があるのだ。そこで、疑問が浮かぶ。犬のパルボウイルス感染症に抗ウイルス薬は効かないのだろうか。

 

冒頭のような背景の中、トルコの大学らは、パルボウイルスの感染によって腸炎を起こした犬28匹を対象にして、抗ウイルス薬の効果を検証する研究を行った。なお、同研究では、症例を①標準的な治療(輸液、抗生剤、駆虫薬、制吐剤)のみを受けるグループ、②標準的な治療に組み換え型ネコインターフェロンωを追加したグループ、③オセルタミビルを追加したグループ、④ファムシクロビルを追加したグループの4つに分けている。すると、以下に示す事項が明らかになったという。

◆パルボウイルス性腸炎の犬に対する抗ウイルス薬の効果◆
・臨床上健康な犬に比べて罹患犬のTNF-α、IL-1β、IFN-α、IFN-γ、ハプトグロビン、CRPは有意に高かった(治療前)
・リンパ球と好中球の減少、好中球対リンパ球比(NLR)の上昇も認めた
・②ではNLRが減少し、最も臨床スコアが改善した
・治療から7日目での生存率は①で約57%、②で約86%、③と④で約71%であった

 

上記のことから、抗ウイルス薬、特に組み換え型ネコインターフェロンωは罹患犬の生存率を大幅に上げることが窺える。よって、今後、同薬剤を組み入れた治療プロトコルが作成され、パルボウイルスの感染に苦しむ犬が1匹でも多く救われることを期待している。

②の経過が最も良好ではあるものの、治療3日目まで白血球数と炎症マーカーに改善は認められなかったとのことです。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38311324/


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