世界中の犬を苦しめる感染症ジステンパーは、ワクチン接種で予防することが重要とされている。しかし一方で、このワクチン接種の効果を懐疑的にみている専門家も居る。そのため、同感染症をワクチン以外で予防し、治療することに注目が集まっているのだ。果たして、そのような方法はあるのだろうか。もし、あるとするならば、どのような手法なのだろうか。
冒頭のような背景の中、中国の大学および研究所らは、ジステンパーウイルスが結合する分子・受容体である①シグナル伝達リンパ球活性化分子(signaling lymphocyte activation molecule、SLAM)および②ネクチン4受容体に着目して、同ウイルスの活動を妨げる方法を模索する研究を行った。なお、同研究では、犬由来のIgGのFc領域と①や②が融合したタンパク質(③)を培養細胞に発現させ、そのタンパク質とジステンパーウイルスの結合ドメインCDV-Hの関係性を観察する形式が採用されている。加えて、③においては、IgGのFc領域と①の融合タンパク質(④)、②の融合タンパク質(⑤)、①②両方が融合したタンパク質(⑥)の3種類が用意された。すると、③はCDV-Hが①や②に結合することを阻害する効果を持ち、ジステンパーウイルスの感染力を劇的に抑制することが判明したという(④⑤より⑥がより効果的)。
上記のことから、③にはワクチンに求められるような感染防御力(免疫力)の増強と同等の効果があることが窺える。よって、今後、③の安全性が検証され、商業化に向けた更なる研究が進むことを期待している。
参考ページ:
https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fvets.2023.1180673/full