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致死的経過を辿る先天性特発性巨大食道症の原因に迫る遺伝子学的研究

投稿者:武井 昭紘

先天性で、且つ、特発性の巨大食道症(Congenital idiopathic megaesophagus、CIM)は、犬に見られる病気で、消化管の蠕動に障害をきたすとともに食道が拡張し、胃への食べ物の輸送が妨げられる特徴を有している。また、当該疾患を発症した子犬は、摂取した水や食べ物が逆流し、オーナーに安楽死を決断させることもある誤嚥性肺炎を罹患するリスクを抱えてしまうことが知られている。そのため、発症する可能性を持つ個体の判別や繁殖計画の見直しによって、ケアが必要な子犬を早期に発見し、あるいは、CIMで苦しむ子犬を1匹でも減らすことが重要とされているのである。

冒頭のような背景の中、欧米の大学らは、CIMの遺伝的素因を有すると言われているジャーマン・シェパード・ドッグ500匹以上から採取したサンプルを対象にして、ゲノムワイド関連解析をする研究を行った。すると、メラニンの凝集に関与するホルモンをコードする遺伝子の上流やイントロン内に一塩基置換(SNP)が起きていることが判明したという。加えて、同遺伝子のイントロンにあるVNTRとよばれる配列の違いが、健康な個体と罹患(する可能性のある)個体を判別できることも分かった。その確率は75%。高い確率で判別できるとのことだ。

上記のことから、ジャーマン・シェパード・ドッグのCIMは、遺伝子配列が発症リスク左右していることが窺える。また、同大学らは、この結果を基に遺伝子検査を開発したと発表している。よって、今後、当該疾患を発症する可能性がある個体、既に発症している個体を早期に発見し、将来生まれてくるジャーマン・シェパード・ドッグにCIMという病気を負わせない繁殖計画を作成するべく、この遺伝子検査が活用されていくことを願っている。

本研究では、メスよりもオスが2倍、CIMを発症しやすいことも分かっております。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35271580/


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