人工知能(機械学習)を用いた診断システムの開発は、医学のみならず獣医学でも注目されており、内分泌疾患や感染症に関する診療を高精度化、効率化を達成するキッカケになるのではと期待されている。中でも、消化器、神経系、泌尿器などに多様な症状を発現する犬の副腎皮質機能低下症(hypoadrenocorticism、HA)は、新人獣医師からベテランまで誰しもが確実に診断を下すことが難しく、機械学習によって構築された診断アルゴリズムを用いた診療の確立が求められている病気なのである。
冒頭のような背景の中、アメリカの獣医科大学は、高次診療施設で臨床検査(CBC、生化学パネル)を受けた犬1000匹以上から、機械学習と獣医師によってHAと診断された犬を抽出し、彼らのデータを解析する研究を行った。なお、機械学習(①)がHAと診断した症例では、血清中コルチゾール濃度(②)の測定も実施されている。すると、以下に示す事項が明らかになったという。
◆犬の副腎皮質機能低下症を確実に診断するための機械学習とその精度◆
・①で12匹がHAと診断された(コルチゾールの測定を実施した)
・5例が②でも陽性となった
・3例は②が2μg/dL(ベースライン)以下で、安楽死またはACTH刺激試験を受けずにグルココルチコイドによる治療をされた(HAであるかは未確定とした)
・4例は②でHAが除外された(偽陽性とした)
・獣医師がHAと診断した全ての症例が①でも陽性とされていた(HAと診断されていた)
上記のことから、偽陽性が一定程度出現するものの、①でHAの犬を確実に判別できることが窺える。よって、今後、①における偽陽性を減らす方法が検証され、診断精度が向上されていくこと、そして、この偽陽性の症例を獣医師が鑑別するためのガイドラインが作成されることに期待している。

①および②で陽性となった症例のうち、4例はミネラルおよびグルココルチコイドを補充され、1例はグルココルチコイドのみで治療されたとのことです。
参考ページ:
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36259689/