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口腔内に腫瘤を抱えている犬の口腔内細菌叢と血液検査所見を調べた研究

投稿者:武井 昭紘

犬の口腔内に発生する悪性腫瘍は一般的に予後が悪く、慢性炎症を伴った二次的な細菌感染のリスクを孕んでいる。そこで、疑問が浮かぶ。この細菌感染ないしは口腔内細菌叢は、腫瘍の病態と関連しているのだろうか。

 

冒頭のような背景の中、タイの獣医科大学らは、30匹以上の犬を対象にして、彼らの口腔内細菌叢と血液検査から読み取れる炎症の状況を調べる研究を行った。なお、同研究では、①口腔内腫瘤が無いグループ、②口腔内腫瘤があるグループ、③口腔内腫瘤が転移したグループの3つに犬を分けている。すると、以下に示す事項が明らかになったという。

◆①②③の口腔内細菌叢と血液検査所見◆
・②③では貧血を認めた
・①に比べて②③のA/G比は低下していた
・①に比べて②③のCRP、CRP/ALB比、NLRは増加していた
・②のCRP/ALB比は①の10倍、③は①の100倍であった
・3グループ全てでナイセリア属の細菌が検出された
・①の細菌叢はナイセリア属(約28%)、パスツレラ属とブドウ球菌(約20%)が主体だった
・②の細菌叢ではナイセリア属、ブドウ球菌、クレブジエラ属、大腸菌が等しく約13%を占めた
・③の細菌叢は大腸菌(約27%)、緑膿菌とブドウ球菌(約13%)が主体だった
・ナイセリア属の細菌は②③で有意に減少した
・大腸菌は③で有意に増加した

 

上記のことから、①に比べて②③では炎症が強く、口腔内細菌叢が変化していることが窺える。また、②と③でも細菌叢が異なることから、その差異が炎症の程度や転移の有無に関与している可能性が考えられる。よって、今後、②③の口腔内細菌叢を①に近づけるプレ・プロバイオティクスのような治療法が考案され、犬の口腔内腫瘤の予後が改善していくことを期待している。

①は21匹、②は8匹、③は7匹の犬で構成されていたとのことです。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37009523/


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