屋外で創傷を負った時に細菌感染を起こし発症する可能性のある破傷風は、筋肉の硬直、呼吸困難、痙攣などを主な症状として、重症の場合は罹患犬を死へ誘う病気である。そのため、当該疾患の予後・転帰、つまり生死を分かつファクターを特定し、生存率を向上させることが重要だとされているのだ。
冒頭のような背景の中、ドイツのユストゥス・リービッヒ大学ギーセンは、一定の基準を満たし破傷風と診断された犬40匹以上を対象にして、診療記録を解析する研究を行った。なお、同研究では、重症度を4段階で評価している。すると、以下に示す事項が明らかになったという。
◆破傷風を発症した犬の生死を分かつファクター◆
・約76%の症例が生存した
・約24%%の症例が死亡した(全症例の約14%は安楽死されている)
・死亡した症例には2歳未満の個体が多かった
・また死亡した症例の「発症から初診までの期間」は2日と短かった(生存症例は4日)
・さらに死亡した症例では抗生剤を処方される頻度が低く、重症度が高かった
・加えて死亡した症例は高体温や呼吸器症状(肺炎、喉頭の痙攣)を呈することが多かった
・創傷の状態、栄養管理、抗生剤、筋弛緩薬、抗毒素による治療は生死を分けなかった
上記のことから、創傷の程度や治療内容を除いて、様々なファクターが罹患犬の生死を分けていることが窺える。よって今後、若く、症状の進行が早く、あるいは、重症である症例に対する治療法を見直す研究が進められ、「生存率を上げる治療とは何か」について議論が深まることを期待している。
参考ページ:
https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fvets.2022.1015569/full