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FIPによって起きる強い炎症に関与する遺伝子とワクチン開発への展望

投稿者:武井 昭紘

猫伝染性腹膜炎(feline infectious peritonitis、FIP)は、猫コロナウイルスの変異株によって起きる感染症で、世界的に承認された有効な治療法・予防法が無く、対症療法で治療するしか選択肢がない病気である。そのため、有効な治療法、あるいは、予防法の開発が常に望まれているのだ。つまり、予防法の観点からすると、有効なワクチンの開発が急務の課題となっているのである。

冒頭のような背景の中、華中農業大学は、コロナウイルスの複製、病原性、宿主体内の炎症反応・免疫応答に深く関与するORF7a遺伝子に着目して、この遺伝子を欠く組み換え型FIPウイルスを猫に、ワクチンのような扱いで接種し、且つ、病原性の弱い株のような扱いで感染させ、彼らの経過を追跡する研究を行った。すると、組み換え型ウイルスは非病原性で、感染した(接種した)個体に症状が発現しないことが判明したという。また、3回の感染(接種)で液性免疫と細胞性免疫の双方が強化されることも明らかになった。加えて、病原性を有するFIPウイルスの感染を防ぐ確率が40%に達することも確認されたとのことだ。

上記のことから、ORF7a遺伝子を欠く組み換え型FIPウイルスは、安全な弱毒生ワクチンになり得ると考えられる。よって、今後、同ウイルスを基にFIPワクチンが開発され、猫の感染症治療が進化を遂げることを期待している。

感染を防ぐ確率を向上させる方法についても議論が深まることを期待します。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38176470/


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