腹腔内リンパ節の病理学的な評価をする場合、細胞診または生検(病理組織検査)の何れかが選択される。無論、生検を選択した方が検査の精度は上がるだろう。しかし、その生検は侵襲度が強い。生体に大きな負担を掛けるのだ。ならば、細胞診を選択するかというと、侵襲度は強くないが、それはそれで診断に結び付く結果を得る可能性が低くなると言われている。では実際のところ、細胞診と生検の診断精度には、どれ程の差があるのだろうか。
冒頭のような背景の中、ロンドンの北、ケンブリッジに程近いシックス・マイル・ボトムに位置する高次診療の動物病院は、過去4年間(2014年〜2018年)において腹腔内リンパ節の生検(開腹をしている)を実施した猫50例以上の診療記録を解析する検査を行った。すると、計60ヶ所のリンパ節生検のデータが集積され、以下に示す事項が明らかになったという。
◆猫の腹腔内リンパ節の細胞診と生検◆
・開腹時に症例の約86%でリンパ節の腫大が確認された(①)
・①の約20%(9例)は超音波検査でリンパ節の腫大が認められなかった(②)
・②の1例はリンパ腫と診断された
・約37%の症例で超音波ガイド下にて細胞診が実施された(③)
・③の約26%(5例)が生検で腫瘍と診断された(④)
・④の1例のみが細胞診で正確に診断された
上記のことから、細胞診の精度は低いことが窺える。また、おそらく腹腔内リンパ節の細胞診を決断するキッカケになる超音波検査(リンパ節の腫大)でも異常を見逃す可能性が否定できない状況である。よって、これらの検査・所見を過信するべきではないと言え、主訴や臨床症状から鑑別リストに腹腔内腫瘍が含まれる場合は、少なくとも一度はリンパ節の生検を検討することが望ましいと思われる。
参考ページ:
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32419573/