ニュース

腸内細菌叢とフードの関係(肥満になりやすい体質の犬はいるのか)

投稿者:武井 昭紘

人医学において、細身の体型のヒト(痩せ型)と肥満や過体重のヒト(肥満型)では、腸内細菌叢が異なるとされている。具体的には、主に2つの細菌種(Bacteroidetes属とFirmicutes属)のバランスを基に考えられており、痩せ型に比べて、肥満型では、Bacteroidetes属の比率が低下し、Firmicutes属の割合が増加する傾向にある。Firmicutes属は糖類の分解能が高い特徴を持っており、この細菌数が多いと、食事中の糖分(炭水化物)をエネルギーに変換しやすい「体質」となる。つまり、同じ食事量でも、Firmicutes属が多い腸内細菌叢のヒト(肥満型)は、痩せ型よりエネルギーを余分に吸収しやすくなるということである。

上記の腸内細菌叢の事実は、ペットにおいても同じことが言えるのだろうか?

この疑問を調査するために、アメリカに本社があるネスレピュリナペットケア株式会社が、ある調査を行った。同社は、様々な体型のラブラドール(32匹)とビーグル(32匹)を調査対象として、各種16匹ずつの2群(計4群)に分けて、「低」タンパク「高」炭水化物食または「高」タンパク「低」炭水化物食を4週間給与して、腸内細菌叢の変化を観察した。

調査の結果、ラブラドールおよびビーグルのいずれの群でも、「低」タンパク「高」炭水化物食ではBacteroidetes属が増加し、「高」タンパク「低」炭水化物食ではFirmicutes属が増加することが明らかとなった。また、この腸内細菌叢の変化は、過体重や肥満体型の犬で激しいことも判明した。よって、食事の成分のバランスによって腸内細菌叢が変化し、その変化はエネルギーを効率良く吸収できるように適応をしていると考えられ、肥満体型ほど食事の変化に敏感であると推測できる(「高」タンパク「低」炭水化物食では、少ない炭水化物を取りこぼすこなくエネルギー源とするためにFirmicutes属が増加するのではないだろうか)。

今後、さらに、犬の腸内細菌叢とフードの関係性について研究が進めば、ペットの体重管理用のフードは大きな進化をするのかも知れない。多くのペットが標準体型に近づけば、ペットの健康状態も良好となると同時に、過体重や肥満体型の犬の保定や処置(留置など)に苦労をする動物病院スタッフを考えると、診察業務も進めやすくなることが期待できると思う。

いつの日か、食べるだけで必ず痩せられるドックフードが開発されるかも知れない。

いつの日か、食べるだけで必ず痩せられるドックフードが開発されるかも知れない。

 

参考ページ:

https://phys.org/news/2017-01-dog-diet-gut-microbiome.html


コメントする