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犬の多中心型リンパ腫の治療経過・予後を反映するマイクロRNAについて解析した研究

投稿者:武井 昭紘

マイクロRNA(microRNA)は、人医療および獣医療における非常に有望な診断・予後判定マーカーとして注目されている物質で、犬の僧帽弁逆流症多中心型リンパ腫猫の腎盂腎炎などとの関連性について研究が進められている遺伝子調整因子である。一方で、話はmicroRNAから離れるが、犬の多中心型リンパ腫は、リンパ腫全体(母集団)の80%を占めるほどに一般的な血液系腫瘍であるものの、個体によって、治療経過(寛解に至る症例、至らない症例)や予後(生存期間)にバラつきがあるのが現状となっている。

そのような背景の中、ニューヨーク州に程近いカナダの南部に位置するゲルフ大学は、多中心型リンパ腫の犬の治療経過・予後に関与するmicroRNAを広く探し当てる研究を行った。すると、罹患犬の血液およびリンパ節から38種類のmicroRNAを検出することに成功し、寛解と非寛解を分かつmicroRNA(B細胞性リンパ腫にCHOPプロトコールを適用)、1年以内に死の転帰を辿る症例に発現しているmicroRNA、生存期間と相関関係を示すmicroRNAが存在していることを確認できたとのことである。

上記のことから、microRNAの解析は、多中心型リンパ腫を発症した犬の治療経過(治療反応性)や予後を判定する有用なマーカーであると考えられる。よって、今後、1日でも早く、本研究にて検出されたmicroRNA各種を組み合わせた遺伝子検査が商業化され、その検査法が、オーナーが多中心型リンパ腫に苦しむ愛犬と向き合う姿勢を決める指標の一つとなることを期待している。

ゲルフ大学は、microRNAパネルの開発を研究のゴールとして掲げているとのことです。

 

参考ページ:

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/31826004


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