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分子標的学という新たな視点から解析された犬のMRと期待される未来の治療法

投稿者:武井 昭紘

犬の僧帽弁逆流症(MR)では、外科手術を除いて完治させる手法が確立されておらず、薬物や食餌管理による症状の進行を遅らせる治療が選択されることが多いという現状がある。そのため、高額な外科手術を選択できないペットオーナー(そして、その愛犬)のために、、「心臓病の完治を目指す」という視点に立ち、新しい内科療法を開発する研究を進めることが重要であると考えられる。

そこで、アメリカのタフツ大学は、「他に類を見ない」治療法を開発することを目的として、分子標的学を用いた犬のMRの病態解析をする研究を行った。同研究では、血液中のエキソソーム(細胞間で伝達される袋状の構造)に含まれる遺伝子調節因子であるマイクロRNA(ex-miRNA)に着目して、以下に示す3つのグループに分類された犬との関連性が検証されている。

◆ex-miRNAの分析を実施した3グループ◆
①臨床上健康な犬:8例
②無症状のMR:8例
③症状を呈するMR:11例

 

研究の結果、③のみで有意に上昇するmiR-181cおよびmiR-495、②と③で有意上昇するmiR-9、③のみで有意に低下するmiR-599を含めて、①②③の間で有意差を認めたex-miRNAが58種類にも上ることが明らかとなっている。これを受け、同大学は、MRの発症因子としてのmiR-9、MRの病状を進行させる因子としてのmiR-181cとmiR-495の分析を主体に更なる研究を進めることを予定している。

今後、犬のMRにおけるex-miRNAの役割が明確となれば、ex-miRNA(または血液中のエキソソーム)の量を増減させる薬剤の開発により、犬のMRが「完治できる内科疾患」として認識される未来が訪れるかも知れない。

記事で紹介した研究のように、病状の進行を遅延させることしかできないとされる多くの慢性疾患に関して、「視点を変えた」研究が行われることを願っております。

記事で紹介した研究のように、病状の進行を遅延させることしかできないとされる多くの慢性疾患に関して、「視点を変えた」研究が行われることを願っております。

 

参考ページ:

http://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/20013078.2017.1350088


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