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急性に吐血と下血を呈した12歳齢のラブラドール・レトリバーが抱えていた消化器疾患

投稿者:武井 昭紘

12歳のラブラドール・レトリバー(12歳、去勢オス)が、経過としては1日にも満たない急性の吐血および下血を主訴に高次診療施設を訪れた。診察の結果、胃潰瘍が疑われたため、輸液・輸血療法、胃粘膜保護剤、制吐剤、鎮痛薬の投与が適応された。しかし、期待される良好な反応は得られなかった。一体、彼の身に何が起こっているのだろうか。

原因追究のために、試験開腹術に臨んだ。胃の内部を探る。小弯に粘膜が隆起した部位を発見。そこは言わば「水膨れ」の状態にあったという。その組織と潰瘍化した部分を切除して病理学的に分析をする。水膨れを呈した粘膜の下には直径1mmを超える血管(動脈)が存在していた。そして、潰瘍化した部位にも直径が0.75mmを超える血管があり、加えて血栓も確認された。

症例報告を行ったオーバーン大学は、本症例の病態がヒトの「デュラフォイ潰瘍」に似ていると述べる。また、犬で当該疾患が報告されたことはないと訴える。デュラフォイ潰瘍は消化管粘膜の下を走る動脈が太くなるととに、粘膜が破綻して致命的な出血を起こす病気だ。果たして、類似の病態を抱える犬は他にも居るのだろうか。吐血・下血で苦しむ犬は少なくないことを考慮すると、有病率を算出することは重要だと思われる。

本症例は手術から12日目にして、感染が原因で亡くなっています。

 

参考ページ:

https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fvets.2022.932435/full


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