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肥満の猫の腸内細菌叢を微生物学的に解析した研究

投稿者:武井 昭紘

一般家庭で飼育されている猫の45%が罹患しているとされる肥満は、インスリン抵抗性、脂質異常症や腫瘍性疾患の発症、循環器への負荷、寿命の短縮などに関与しているとされている。また、犬の肥満と腸内細菌叢との関連は近年注目を浴びており、いわゆる「腸活」が肥満の予防・治療になるのではと期待されているのだ。しかし、彼らの肥満を治療する有用な薬は乏しく、ごく一般的な減量法である運動と食餌制限も充分な効果を保証するものではなく、且つ、猫の肥満と腸内細菌叢に関する情報は少ないのが現状である。

そこで、アメリカおよび中国の大学らは、①臨床上健康な猫8匹と②肥満の猫8匹の腸内細菌叢を微生物学的に解析する研究を行った。なお、同研究では、猫たちから採取した糞便サンプルを用いてシーケンスが実施されており、110万件以上の配列が特定されている。すると、①比べて②では細菌の多様性(特にFirmicutes門、グラム陽性)が大幅に減っており、Firmicutes門とBacteroidetes門(グラム陽性)の比が低下していることが判明したという。また、①では豊富に認められるPhascolarctobacterium succinatutensErysipelotrichaceae科の細菌が②では大幅に少ない一方で、Bifidobacterium属、Olsenella provencensisDialister属、Campylobacter upsaliensisは②で増えていることも分かったとのことである。

上記のことから、①と②の腸内細菌叢は大きく異なることが窺える。よって、今後、減量に成功した猫の腸内細菌叢を調べる研究や②の腸内細菌叢を①のものに近付けてその減量効果を検証する研究が行われ、猫の肥満を治療する方法(治療薬やプレ・プロバイオティクスの開発、食餌療法の確立)が考案されていくことに期待している。

Firmicutes門とBacteroidetes門の比につきましては、肥満のヒトやマウスの場合と逆の現象が起きているとのことです。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35467389/


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