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犬猫の皮膚や耳から採取したサンプルに存在する細菌種をコロニーの色で類推した研究

投稿者:武井 昭紘

膿皮症や外耳炎などの犬猫の細菌性皮膚疾患は、一次診療施設でも良く遭遇する病気であり、一般的に①細胞診や②細菌培養(薬剤感受性試験を含む)によって診断され、抗生剤療法にて治療される。そのため、細菌種の同定と有効な抗生剤の選択は重要とされているのだ。しかし、①は短時間(即日)で結果ができるも細菌種の同定は難しく、②は同定はできるも時間を要することがデメリットになっているのである。つまり、可能な限り短時間で細菌種が同定できれば、迅速で且つ適切な抗生剤療法が実現すると考えられるのだ。

 

冒頭のような背景の中、ヨーロッパの大学および動物病院らは、細菌種によってコロニーを様々に発色させる培地を用いて、培養結果を臨床経験の浅い4名の獣医師に判定してもらう研究を行った。なお、同研究では、製品化されているChromatic™ MH および Flexicult® Vet、カスタムメイドされたMueller Hinton 寒天ベースの発色培地の3種類の培地が採用されている。また、各獣医師には、10種類の細菌種が形成した100個のコロニー(サンプルは膿皮症または外耳炎の病変部から採取)を評価するように依頼している。すると、以下に示す事項が明らかになったという。

◆発色培地に形成されたコロニーの色と細菌種◆
・各獣医師は72〜86%の確率で正確に細菌種を識別した
・Chromatic™ MHでは培養開始から24時間後の識別精度が最も高かった(約82%)
・Flexicult® Vetでは培養開始から48時間後の識別精度が最も高かった(約86%)
・識別しやすい細菌種は下記の通りだった
緑膿菌(緑褐色)
Enterococcus faecalis(青)
プロテウス属(オレンジを帯びた褐色)
大腸菌(赤)

・ブドウ球菌は特徴のない淡いピンク色のコロニーで、種の識別精度が落ちた
・特にStreptococcus canisは他種と間違われることが多かった
・識別が誤った件数の10%でサンプルが採取された経緯の確認が不十分という過失が起きた

 

上記のことから、発色培地を用いた短時間(1〜2日)の培養で確率約80%の細菌同定が実現できると言える。よって、今後、ヒューマンエラーを減らし精度を上げるべく、色見本、フローチャート(チェックリスト)、色を識別する小型のアナライザーなどが開発され、小動物臨床における皮膚科診療の業務が効率化されることに期待している。

コロニーの色を識別するチュートリアルやトレーニング方法に関する動画も作成されると、経験の浅い獣医師の助けになるかも知れません。

 

参考ページ:

https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fvets.2023.1152229/full


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