猫に特有の特発性膀胱炎(feline idiopathic cystitis、FIC)は、一次診療施設で良く遭遇する下部尿路疾患で、慢性的なストレスが発症の原因であるとされている。そのため、罹患猫のの診察では、ストレスホルモンの一種であるノルエピネフリンの測定がなされることがあるのだ。しかし、このホルモンがFICの発症にどのように関与しているのかは分かっていないのが現状となっている。
冒頭のような背景の中、ハンガリーの国立ブダペスト獣医学大学は、猫の膀胱粘膜由来の上皮細胞を培養し、様々な濃度のノルエピネフリンに曝露する研究を行った。すると、同物質は炎症反応に関わるケモカインであるstromal cell derived factor 1 (SDF-1)と酸化ストレスを引き起こすH2O2のレベル上昇させることが判明したという。また、グリコサミノグリカンおよびタイトジャンクションを構成するタンパク質のレベルを減少させ、粘膜上皮の透過性を亢進することも分かったとのことである。
上記のことから、ノルエピネフリンは炎症を惹起し、酸化ストレスを発生され、膀胱粘膜のバリア機能を低下させることが窺える。よって、今後、FICに対してノルエピネフリンの上昇を抑える治療法を適応し、その有用性を検証する研究が進み、飼育環境の改善や療法食に頼ることの多いFICの治療の幅が拡がることに期待している。
参考ページ:
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38026670/