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野外を犬と走るカニクロス終了後の熱中症と体温管理に関する研究

投稿者:武井 昭紘

イギリスにおいて、春から夏にかけて発症のリスクが上がる犬の熱中症の74%は運動に関連しているとされている。そのため、万が一の緊急事態に備えて、熱中症に対する対処法を心得ておくことが重要で、異常に体温が上昇した犬を適切に冷却することが望ましいと考えられているのだ。また、屋外で犬が熱中症になった場合は、一早く動物病院へ連れて行きたい気持ちを抑えて現場で冷却する、いわゆる”cool first, transport second”という概念が大切だと言われているのである。では実際のところ、搬送は二の次で冷却を最優先事項とする対処法は、どれほど大きな意味を持っているのだろうか。また、数多ある冷却方法の中で、最も効率が良いもの何であろうか。

 

冒頭のような背景の中、王立獣医科大学(Royal Veterinary College、RVC)らは、イギリスで開催されているスポーツイベントのカニクロス(ヒトと犬が一緒に走るイベント)に参加した犬を対象にして、運動後の犬の体温と彼らの管理方法について解析する研究を行った。なお、同研究では、運動後の体温を3地点(運動直後、5分後、15分後)で測定している。すると、50匹以上の犬から115件の冷却措置に関するデータが集積され、以下に示す事項が明らかになったという。

◆カニクロス終了後の熱中症と体温管理◆
・犬の約24%では運動直後よりも5分後の方が体温が高かった
・約59%はクールダウンのために野外での休憩または歩行をしていた
・約30%は冷水に浸かる、または、冷却コートを装着していた
・約10%は冷却措置を講じずに車内に収容された
・体温の変化と運直後の体温、車内に収容されないことは負の相関関係にあった
・冷水(0.1~15℃)に浸かる措置が効率的な冷却方法であった

 

上記のことから、運動をキッカケに起きる体温上昇(熱中症)は冷水に浸かることで抑えられることが窺える。また、運動直後に車に収容されてしまうと体温の低下が遅くなることも分かる。よって、野外で愛犬が熱中症となった場合は”cool first, transport second”を思い出し、現場で冷水に浸け、搬送はその後に考えることが望ましいと思われる。

熱中症の治療で注意するべき低体温症を起こした犬はいなかったとのことです。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38518416/


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