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犬の耐性菌感染症に対する抗生剤療法に幹細胞療法を組み合わせた研究

投稿者:武井 昭紘

耐性菌の出現と、それに有効な新しい抗生剤の開発は正に「いたちごっこ」である。既存の抗生剤が効かない耐性菌に対して有効な新しい抗生剤を開発しても、その抗生剤が効かない耐性菌が新たに出現してしまうリスクが必ず付き纏うのだ。そして、更に新しい抗生剤が求められるようになるのである。つまり、耐性菌との闘いに終止符を打つためには、この無限ループを打破するアイデアが必要なのだ。

冒頭のような背景の中、アメリカおよびタイの獣医科大学らは、抗生剤療法と併用ができる幹細胞療法に着目して、犬の間葉系幹細胞(mesenchymal stromal cells、MSC)の抗菌効果を①in vitroおよび②in vivoで検証する研究を行った。すると、①においてMSCは、一般的に使用されている抗生剤の大部分と相乗的に抗菌活性を発揮するペプチドを生成・分泌することが判明したという。また、皮膚、関節、鼻腔などに既存の抗生剤が効かない感染症を抱える犬8匹にMSCを静脈内投与すると、有害事象の報告は無く、且つ、幹細胞療法を適応する以前の抗生剤療法を内容を変更することなく、創傷の治癒、関節の機能回復、鼻から出てくる分泌物の臭いと量の減少が認められたとのことである。

上記のことから、MSCには抗生剤の効果を増強する力があるものと考えられる。よって、今後、抗生剤療法の効果を最大限引き出す幹細胞療法のプロトコルが開発され、世界から耐性菌が撲滅する未来が訪れることに期待している。

今回紹介した研究で採用された幹細胞療法のプロトコルは、リンク先の文献をご参照下さい。

 

参考ページ:

https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fvets.2022.925701/full


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