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犬の乳腺腫瘍が抗ガン剤に耐性を持つメカニズムについて調べた研究

投稿者:武井 昭紘

メス犬に最も一般的な腫瘍性疾患として挙げられる乳腺腫瘍は、外科手術と組み合わせるようにして補助的に化学療法で治療されることがある。そして、一部の乳腺腫瘍は化学療法に耐性を示すことが知られている。しかし、耐性を獲得するメカニズムは解明されておらず、予防法も薬剤の効果予測も難しいのが現状となっている。

 

そこで、中国農業大学は、ドキソルビシンに耐性を示す犬の乳癌由来の培養細胞CMT-7364を用いて、その細胞の特徴を解析する研究を行った。なお、同研究では、①耐性を持つ前のCMT-7364と②耐性を獲得したCMT-7364の特徴が比較されている。また、この培養細胞をマウスに移植して、腫瘍を形成する能力を評価している。すると、以下に示す事項が明らかになったという。

◆乳腺腫瘍が抗ガン剤に耐性を持つメカニズム◆
・①に比べて②は不均一な間葉系細胞の様相を呈した
・②はドキソルビシン以外の化学療法剤にも耐性を示した
・②では薬剤排出トランスポーター蛋白(BCRP)の転写レベルおよびタンパク質レベルが増加していた
・同じく薬剤の排出に関与するP糖タンパク質については①と②に有意差はなかった
・遊走性と浸潤性を変動させるEMT関連タンパク質の発現状況によって②の遊走性・浸潤性は大幅に増強されていた
・マウスに移植された細胞が形成する腫瘍のサイズに有意差はなかった(移植21日目)

 

上記のことから、BCRPが②の薬剤耐性に深く関与していることが窺える。よって、今後、BCRPの発現をチェックする検査法が確立し、化学療法が有効だと判定できる症例を特定できるようになることを期待している。また、BCRPの発現を抑える治療法も考案され、全ての症例に化学療法が適応できる未来が訪れること(治療の選択肢が増えること)を願っている。

EMT関連タンパク質の発現状況では、E-カドヘリンの減少、ビメンチンとムチンN末端の増加を確認したとのことです。

 

参考ページ:

https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fvets.2023.1129756/full


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