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健康な犬の瞳孔と対光反射に纏わるデータを数値化した研究

投稿者:武井 昭紘

犬の瞳孔が縮瞳しているか、あるいは、散瞳しているか。そして、光を眼に当てた時の反応は。対光反射は、彼らの眼の状態のみならず、神経系のトラブルや感染・炎症などの全身性疾患の有無を把握するヒントを与えてくれる。しかし、この縮瞳・散瞳、対光反射は主観的に判定されることが多い。つまり、何らかの数値をもって判断されることが少なく、客観性に乏しいのだ。では如何にして、その客観性を持たせるか。それが、獣医学の課題の一つとなっている。

 

冒頭のような背景の中、カナダの大学らは、臨床上健康な犬の眼120個以上を対象にして、彼らの瞳孔と対光反射に纏わるデータを数値化する研究を行った。なお、同研究では、データを取得するためにNeurOptics™ PLR-200™ Pupillometerと呼ばれる瞳孔計(医療機器)が用いられている。すると、以下に示す8つの検査項目において参照値が設定できたという。

◆健康な犬の瞳孔と対光反射に纏わるデータ◆
①瞳孔の最大径(MAX):6.05~11.30 mm
②瞳孔の最小径(MIN):3.76~9.44 mm
③瞳孔の収縮率(CON):-37.89~-9.64 %
④反射が起きるまでの時間(LAT):0.11~0.30 s
⑤縮瞳する速度(ACV):-6.39~-2.63 mm/s
⑥その最高速度(MCV):-8.45~-3.75 mm/s
⑦散瞳する速度(ADV):-0.21~1.77 mm/s
⑧縮瞳した瞳孔の直径が元の状態の75%まで戻る時間(T75):0.49~3.20 s

 

上記のことから、次なる課題が生れたものと思われる。瞳孔のサイズに影響を与える各疾患を抱えた犬の①~⑧は参照値からどれ程乖離するのか、①~⑧の変動を記録することで鑑別診断は実現するのか、そして、①~⑧の経時的変化が治療効果や予後の判定に利用できるのか。今後、これらの謎を解明する研究が計画され、小動物臨床における眼科診療のデジタル化が進むことに期待している。

データは、眼1個に対して1回取得されているとのことです。

 

参考ページ:

https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fvets.2022.1020710/full


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