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ペット保険に加入している犬猫に起きる問題点について調べた研究

投稿者:武井 昭紘

ペット保険に加入すること。そこには、高額な医療費の掛かる診療に対する経済的な負担を軽減する効果がある。つまり、時にそれは、医療費が支払えないことを理由にした安楽死を防止する力になるのである。しかし、この利点の裏を返せば、問題点が浮き彫りになってしまう。オーナーの経済的な負担が軽くなるという、言わば魔力のようなものに魅せられた獣医師が様々な提案をしやすくなり、過剰な検査や治療を薦める事態に陥る可能性があるのだ。では実際のところ、「ペット保険に加入していること」は、診療現場にどのような影響を与えるのだろうか。

 

冒頭のような背景の中、ヨーロッパの獣医科大学らは、①オーストリア、②デンマーク、③イギリスで働く獣医師600名以上を対象に、ペット保険に関するオンラインアンケートを実施する研究を行った。すると、以下に示す事項が明らかになったという。

◆「ペット保険に加入していること」が診療現場に与える影響◆
・3ヶ国全ての獣医師がオーナーのストレスを軽減すると確信していた
・多くの獣医師が診療方針の決定に影響が及ぶと懸念していた
・①と③の獣医師の大多数は検査が過剰になるリスクを孕んでいると回答した
・③では過剰な治療が適応される可能性があるとも考えていた
・ペット保険に加入しているオーナーにはCT検査が提案される機会が増えていた

 

上記のことから、「ペット保険に加入していること」は診療方針の決定を左右するも、冒頭に記した「事態」に陥る可能性も否めないと考えている獣医師が多いことが窺える。そして、その代表例が、「高額な医療費の掛かるCT検査を提案する」という点だと言える。果たして、「ペット保険に加入していること」は、動物にとって、オーナーにとって、獣医師にとって有益なことなのか。今後、更なる研究が進められ、ペット保険に潜む倫理的な問題が浮き彫りになることを期待している。

②③と比べて①では『ペット保険は不要』と述べる獣医師が多かったとのことです。また、『ペット保険の義務化を支持する』と回答した獣医師は半数未満であるという結果も出ています。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34997603/


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