ニュース

肺転移を抱える犬に対するサイトカイン吸入療法の効果を検証した研究

投稿者:武井 昭紘

サイトカインを用いた免疫療法は、動物の体内における免疫応答を強力に刺激することから、悪性腫瘍に対する効果が期待されている。しかし、例えばインターロイキン-15(IL-15)は「その効果」を有望視されているものの、臨床試験にて全身性に毒性を発揮することが確認されており、使用は制限されるべきとされているのだ。一方、話は変わるが、肺疾患の治療では薬剤の全身投与以外に「肺だけに薬剤を到達させる」、いわゆる吸入療法が適応されることが少なくないのである。つまり、毒性がネックになっているサイトカインを動物に吸入させれば、毒性の最少限化と充分な抗腫瘍効果の双方が得られる可能性があるという仮説が立てられるのだ。

 

冒頭のような背景の中、アメリカの大学らは、画像診断で確認できる肺転移を抱える犬18匹を対象にして、2つ異なる用量(①50μgおよび②70μg)に調整されたIL-15の吸入療法の効果を検証する研究を行った。なお、同研究では、1日2回のペースで14日間の吸入療法が実施されており、その恩恵を受けた犬の割合が算出されている。すると、以下に示す事項が明らかになったという。

◆肺転移を抱える犬に対するサイトカイン吸入療法の効果◆
・②では毒性が認められた
・そのため①の用量で効果が検証された
・吸入療法の効果があったと判断される症例は全体の39%に達した
・そのうち1例は完全寛解、1例は部分寛解、5例は病状が安定した

 

上記のことから、僅か14日間で吸入療法は効果を発揮することが窺える。よって、今後、毒性を限りなくゼロにするべく治療期間を短縮する(ベストで最短の期間を模索する)研究が進み、安全で効果的な癌治療が確立することを期待している。

吸入から1~6時間後に、血中からIL-15が検出されるようになるとのことです。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35680383/


コメントする