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野良猫、ノネコ、保護猫の数を最も効率良くコントロールする不妊・去勢術に関する研究

投稿者:武井 昭紘

単独飼育、多頭飼育、完全室内飼育に屋外へのアクセスが許された環境。更には、ヒトの生活圏内で自由に暮らしたり、ヒトに頼らず野山で暮らし、時には保護施設へと収容される。犬と肩を並べるほどに、あるいは、犬を凌ぐ人気を誇り、置かれている状況は様々な猫たちには、彼らを取り巻く共通した社会問題が存在している。それは、飼育放棄、多頭飼育崩壊、不妊・去勢手術の不徹底による過剰繁殖と、これに伴う周囲環境の悪化、保護施設の負担増加、感染症の蔓延である。そのため、彼らの個体数(特に野良猫、ノネコ、保護猫の数)を管理することが重要視されている。具体的には、野良猫(ヒトの生活圏で自由に暮らす猫)やノネコ(ヒトに頼らず野山で暮らす猫)に不妊・去勢手術を施し、多頭飼育崩壊の現場から猫が保護されているのだ。そこで、疑問が浮かぶ。彼らの個体数を最も効率良くコントロールする方法とは何であろうか。無論、全ての猫に不妊・去勢手術を実施することで達成されるとは思うが、人海戦術とも言える、永遠に終わりそうもない作業を繰り返すしかないのだろうか。

 

冒頭のような背景の中、イギリスの大学および動物保護団体らは、同国内の28の地域を意識した猫の個体数をモデルにして、①母集団全体に不妊・去勢手術を実施する場合と、②一般家庭で飼育されているメス猫に不妊手術を実施する場合の個体数の変動をシュミレーションする研究を行った。すると、②のみで充分に個体数が管理できることが判明したという。

 

上記のことから、一般家庭で飼育されているメス猫に不妊手術を実施する医療行為は、手術に臨む猫自身の病気を防ぐだけではなく、また不測の妊娠をさけるだけでもなく、野良猫、ノネコの過剰繁殖を防ぎ、保護猫の数にも影響を与え、周囲環境の悪化、保護施設の負担増加、感染症の蔓延を防止する効果を持っていると考えられる。よって、動物病院に勤める獣医師は、猫に纏わる社会問題に取り組んでいるという意識も持ちつつ、メス猫のオーナーに不妊手術を提案して頂けると幸いである。

大学らは、「若い」猫に不妊・去勢手術を施すことも個体数管理に有効だと述べています。

 

参考ページ:

https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0287841


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