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猫の慢性歯肉口内炎に対する幹細胞療法の効果を長期的に追跡した研究

投稿者:武井 昭紘

近年、猫のQOLを悪化させる慢性歯肉口内炎(feline chronic gingivostomatitis、FCGS)に対する治療として、幹細胞療法が注目されている。故に、同治療法のプロトコルや効果を検証し、その結果を臨床現場で活用することが重要とされているのだ。

 

冒頭のような背景の中、カリフォルニア大学は、間葉系間質細胞(Mesenchymal stromal cells、MSC)の移植を受けた難治性のFCGS症例38件の診療記録を解析する研究を行った。すると、MSCの移植から最長9年後までの経過が追跡でき、以下に示す事項が明らかになったという。

◆FCGSに対する幹細胞療法の効果◆
・約66%の症例が治療に反応した
・約59%の症例で永続的な改善や治癒を達成した
・治療中と治療直後における有害事象の発生率は約34%であった
・その大部分は一時的な輸血時のような副作用だった
・持続的な有害事象は認められなかった
・自家移植と同種間移植の効果に違いはなかった
・治療開始時の重症度と治療後の重症度に関連性はなかった
・治療から6ヶ月後の病状が長期的な改善を予測するファクターになっていた

 

上記のことから、FCGSに対する幹細胞療法は比較的安全で有効な治療だと言える。よって、今後、有害事象を減らし、治療に反応しない症例への対策を検討する研究が進められ、FCGSが根治を望める病気になることを期待している。

90%以上のオーナーが必要に迫られれば治療を再び受けたいと考えていたとのことです。

 

参考ページ:

https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fvets.2023.1171922/full


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