ニュース

キアリ奇形に続発する脊髄空洞症の重症度を判定する拡散テンソル画像

投稿者:武井 昭紘

アメリカの大学らの研究によれば、通常のMRI画像とは異なる拡散テンソル画像なるものを利用すると、犬の変性性脊髄症を起こしている病変部の可視化が可能となり、その所見は重症度と相関するという。そこで、疑問が浮かぶ。数多ある犬の神経系疾患の検査において、拡散テンソル画像を用いると、今までに無い新たな見解が得られるのではないだろうか。そう、見えなかった部分が可視化されるように。

 

冒頭のような背景の中、ポーランドの大学は、通常のMRI画像では重症度が判定できないキャバリア・キング・チャールズ・スパニエル(Cavalier King Charles Spaniel、CKCS)のキアリ様奇形に続発する脊髄空洞症(syringomyelia、SM)に着目して、当該疾患に拡散テンソル画像を適応する研究を行った。なお、同研究には、①SMが認められないキャバリア12匹、②SMと診断されるも臨床症状が現れていないキャバリア10匹、③SMと診断され臨床症状を伴ったキャバリア8匹が参加している。また、SMを診断する上で重要な関心領域(region of interest、ROI)は、C1〜C4の3つの椎間板をポイントとして設定しており、ADC値とFA 値と呼ばれる項目が評価の対象となっている。すると、以下に示す事項が明らかになったという。

◆キャバリアの脊髄空洞症の重症度を判定する拡散テンソル画像 ◆
・全てのROIにて①②③のADC値に有意差があった
・ROI-1とROI-3にて①②③のFA値に有意差があった
・①に比べて③のADC値は全てのROIにて低かった
・①に比べて③のFA値はROI-1とROI-3にて高かった

 

上記のことから、拡散テンソル画像によって、臨床症状を伴わない脊髄空洞症と、伴う脊髄空洞症を抱えるキャバリアを判別できることが窺える。つまり、同画像で重症度判定ができると言えるのだ。よって、今後、拡散テンソル画像を組み込んだ脊髄空洞症の診断アルゴリズムが作成され、そのアルゴリズムが治療方針の決定に寄与することを期待している。

本研究には年齢と体重が様々なキャバリアが集まったとのことです。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36496926/


コメントする