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犬の変性性脊髄症を視覚的に診断できるようにした拡散テンソル画像

投稿者:武井 昭紘

犬の変性性脊髄症(degenerative myelopathy 、DM)は、脊髄の白質が侵されて椎間板ヘルニアに類似した症状を呈する進行性の神経疾患であり、最終的には呼吸困難(呼吸筋の麻痺)で亡くなってしまう難病として知られている。そのため、早期発見を目指し、画像検査による確定診断が求められているのだが、神経系のトラブルを検出することに長けたMRI検査をもってしても、その病変部の画像化は難しいのが現状である。つまり、この厳しい現実を打破する診断手法が常に望まれているのだ。

そこで、コーネル大学らは、DMに罹患した犬と臨床上健康な犬を対象に、白質の病変の可視化に優れた拡散テンソル画像(DTI)用いて彼らの脊髄を撮影する研究を行った。すると、DTIを構成する成分であるFA(fractional anisotropy)値が、症例の神経学的な重症度に相関して低下していくことが判明したという。

上記のことから、DTI(FA値)は、犬のDMを視覚的に、あるいは、数値として認識するためのマーカーになり得ることが窺える。よって、今後、様々な犬の脊髄疾患のDTIが比較され、DMを疑う症例に確定診断を下す画像検査が確立していくとともに、その診断技術が世界的に普及することを願っている。

DTIによる早期発見が、オーナーがDMで苦しむ犬と向き合う時間を増やすことを祈っております。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33350517/


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