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鉗子のシャンクを利用して胸の深い犬の不妊手術を試みた研究

投稿者:武井 昭紘

術野を小さくし、麻酔時間を短縮し、痛みを軽減する。これらの事項は、手術をする際に、とりわけ健康な動物に不妊・去勢手術を実施する際に求められる理想だ。では如何にして、これらを現実のものとするか。ある手技の効果を検証した研究を紹介したい。なお、研究を発表したイランの大学らによると、詳細は以下の通りである。

 

◆鉗子のシャンクを利用して行う犬の不妊手術◆
・臨床上健康な大型犬で、且つ、胸の深い雑種18匹を対象にした
・彼女らに①従来の術式と②鉗子のシャンクを利用した術式で不妊手術を施した
・その様子を撮影した動画を基に手術に纏わる下記の時間を計測した
a.皮膚切開から閉腹(皮膚縫合)までの時間
b.左側の卵巣提索に鉗子をかけてから右側の卵巣提索を切断するまでの時間
c.卵巣靭帯を挫滅して切断する時間(②ではメスを使って切断)
d.卵巣が腹腔内に落ち込むのを鉗子のシャンクで抑える時間
e.3つの鉗子を卵巣提索に配置する時間
f.卵巣提索の結紮開始から終了までの時間
g.白線の縫合開始から皮膚縫合終了までの時間
h.aからbとgを除いた時間

・bが30%以上短縮された
・その短縮はaと相関していた
・①よりも②のa、b、f、g、hが有意に短縮された
・①よりも②において術後6、24、48時間後の疼痛レベルが有意に低かった
・①よりも②において術後48時間後のCRP濃度が有意に低かった

 

上記のことから、卵巣が腹腔内に落ち込むのを鉗子のシャンクで抑える②は、手術時間を短くして、且つ、痛みや炎症を軽減する効果を有していることが窺える。よって、今後、本研究で検証された術式が普及し、よりストレスの少ない犬の不妊手術が実現することに期待している。

リンク先の論文内で、卵巣が腹腔内に落ち込むのを鉗子のシャンクで抑える術式に関するイラストと説明文が閲覧できます。

 

参考ページ:

https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fvets.2023.1210089/full


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