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オクラニシチブを投与された犬で抗生剤療法の機会が減らされる可能性に関する研究

投稿者:武井 昭紘

犬のアレルギー性皮膚炎には、外耳炎や膿皮症など感染症のリスクが付き纏う。そのため、アレルギー性皮膚炎の治療には抗生剤療法が伴う場合がある。しかし、耐性菌が社会問題となっている現代において、抗生剤の乱用はさけるべきだと言える。一方、話は変わるが、アレルギー性皮膚炎で起きる炎症や掻痒感には①ステロイド剤や②オクラシチニブで対応されることが多い。そこで、疑問か浮かぶ。①や②は抗生剤療法とどのような関係性にあるのだろうか。両薬剤の使用で、抗生剤の投与量は変化するのだろうか。

 

冒頭のような背景の中、世界的医薬品メーカーであるゾエティス社は、その関係性に焦点を当てて、痒みのケアとして①または②を投与された膿皮症の犬の診療記録を解析し(研究A)、また、アレルギー性皮膚炎の犬を飼うオーナーとその犬を担当する獣医師を対象にしてアンケートを依頼する研究(研究B)を行った。すると、以下に示す事項が明らかになったという。

◆①②と抗生剤療法の関係性◆
研究A
・①または②を投与された罹患犬のデータは12000件以上になった
・①は7000件以上で構成された
・②は5100件以上で構成された
・①を投与されると抗生剤療法のリスクが減少した(①や②を投与されていない犬と比較して約0.7倍)
・②を投与されても抗生剤療法のリスクが減少した(約0.8倍)

研究B
・アンケートの回答は58例分集まった
・②を投与された罹患犬のQOLは有意に改善した
・オーナーの満足度も有意に高かった
・獣医師の評価でも重症度が有意に改善した
・②は抗生剤療法の機会を80%以上減少させた
・また8週間を超える抗生剤療法の機会は100%の確率で防いだ

 

上記のことから、①や②の投与によって抗生剤療法のリスクや機会が減ることが分かる。よって、今後、①または②を投与されている皮膚炎の犬における抗生剤療法について議論が深まり、抗生剤の乱用、および、耐性菌の出現が大きく減少することを願っている。

全米1100軒以上の動物病院から診療記録が提供されたとのことです。

 

参考ページ:

https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fvets.2023.1207582/full


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