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ビーガン食を与えられた犬336匹の健康状態を調べた研究

投稿者:武井 昭紘

80億人を超えた世界人口を維持する上で、充分な食糧を用意することは喫緊の課題である。その中で、産業動物から得られる肉類は、大量の飼料を要するため、食糧危機を前にすると非効率的な生産物と言われているのだ。また、初めから肉類として販売される予定で生まれ、飼育される動物の運命を考えると、福祉上の問題があることは否めないのである。そこで注目を浴びている食糧の一つが、植物なのだ。しかし、この植物をベースにした食糧には大きな問題点があるとされている。肉類に比べて、タンパク質含有量が少ないのである。つまり、ヒトや犬猫などの肉食動物の栄養管理において、植物をベースにした食糧は不適切だと考えられているのだ。ならば、ここで疑問が浮かぶ。前述した食糧危機を念頭して犬や猫に植物をベースにした食糧、いわゆるビーガン食を与えるとして、そこには何か問題は発生するのだろうか。彼らの健康は損なわれてしまうのだろうか。

 

冒頭のような背景の中、ヨーロッパおよびオーストラリアの大学らは、少なくとも1年以上犬を飼育している世帯を対象にして、彼らの食餌と健康状態を調べる研究を行った。すると、食餌管理をしている人物2500名か以上から回答が得られ、以下に示す事項が明らかになったという。

◆ビーガン食を与えられた犬336匹の健康状態◆
・54%の犬(1300匹以上)が肉類ベースのフードを食べていた(①)
・33%の犬(800匹以上)が生肉を食べていた(②)
・13%の犬(336匹)がビーガン食を食べていた(③)
・②③に比べて①の総合的な健康状態は悪かった
・③に比べて②の総合的な健康状態は僅かに良かった
・ただし③の年齢層は有意に若かった
・健康問題を経験した犬の割合は①で49%、②で43%、③で36%であった

 

上記のことから、①よりも②③の方が健康的であると考えられる。また、②と③に優劣をつけるならば、生肉に含まれる栄養素の不足や生肉に付着する病原菌の存在がリスクだと捉えられるため、③の方がより優れていると言える。よって、今後、迫りくる食糧危機に備えた(植物ベースの)犬用フードが数多く開発され、肉類ベースのフードと植物ベースのフードを自由に選択できる未来が訪れることを期待している。そして、その未来が、生肉に潜む危険性を打ち払ってくれることを願っている。

猫における同様の研究でも植物ベースのフードは健康的だという結論になっておりますので、リンク先の論文をご参照下さい。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35417464/


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