ニュース

整形外科の手術を受けた犬猫のオーナーがフェードアウトする要因を調べた研究

投稿者:武井 昭紘

整形外科疾患に対する手術に臨んだ犬猫の診察をしている獣医師には、ある悩みが生じる。術後経過を観察するフォローアップ(再診)を繰り返す度に、彼らのオーナーがフェードアウトしてしまうのではないか、つまり、再診が必要とならない段階まで経過が追えないのではないかという悩みが。では、どのような条件がフェードアウトに繋がるのだろうか。それを明らかにすることは、フェードアウトを防止し、手術の成績を「最後まで」把握して自身の手技を見つめ直す上で、大きな課題である。

冒頭のような背景の中、フロリダ大学は、整形外科疾患に対する手術を受けた犬猫480匹以上のオーナーを対象にして、再診の指示に対する遵守・不遵守の状況を調べる研究を行った。なお、同研究では、再診が必要とならない段階まで経過が追えたケースを「遵守」、そうではないケースを「不遵守」として扱っている。すると、全体の約66%は「遵守」に該当しており、緊急で手術に同意したオーナーよりも「手術をする」と決断・選択したオーナーの方が1.6倍、猫よりも犬のオーナーの方が2.4倍、カルテに登録されたオーナーの人数が一人よりも複数の世帯の方が2.1倍、遵守する可能性が高いことが判明したという。また、犬の年齢・体重、固定具の使用期間、手術費(動物病院独自の費用援助や金融機関のローンなども含む)は、フェードアウトのリスクを高める因子ではなかったとのことである。

上記のことから、緊急で手術をした症例や猫のオーナー、カルテ上で所有者が一人の世帯はフェードアウトしやすいことが窺える。よって、これらに該当するケースを担当する獣医師は、出来得る限り詳細にフォローアップに関するインフォームド・コンセントを実施することが望ましいと思われる。また、今後、フェードアウトする理由(経済的理由、獣医師とオーナーの「治った」と感じるタイミングの差など)を特定する研究が進み、オーナーの視点からも、獣医学的にも、ベター(より良い)と考えられるフォローアップの期間が再考されることに期待している。

統計学的には「動物病院とオーナーの自宅との距離」もフェードアウトに関連しているようですが、臨床的には重要ではなかったとのことです。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34914628/


コメントする