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ヒトと犬猫の膀胱腫瘍を遺伝子学的に比較した大規模かつ世界的な研究

投稿者:武井 昭紘

ヒトの筋層浸潤性膀胱癌(muscle-invasive bladder cancer、MIBC)の発生に関与している遺伝子は、現在分かっているだけでも実に60を下らないという。そして、これらの遺伝子は治療のターゲットになると目されているのだ。ならばと、期待してしまう。膀胱腫瘍は犬猫にも発生する。ヒトと犬猫の膀胱腫瘍に関わる遺伝子に共通点があるとすれば、医学のみならず獣医学も発展させられる。果たして、私達と彼らに共通する遺伝子はあるのだろうか。

冒頭のような背景の中、北米の大学らは17ヶ国の病理学者に協力を仰ぎ、ヒト、犬、猫の膀胱癌サンプルの遺伝子を解析する研究を行った。すると、ヒトの膀胱癌から検出される遺伝子変異60個のうち、犬では2 個(ARID1A、KDM6A)、猫で は3 個(TP53、FAT1、NRAS)が検出できたという。また、猫で検出されたTP53は、ヒトで最も頻繁に変異する遺伝子であることも判明そうだ。加えて、ミスマッチ修復欠損やクロモトリプシス(染色体の崩壊と再編成)といった変異が、ヒトと同様に犬猫にも起きることが分かったとのことである。

上記のことから、ヒトと犬、ヒトと猫の膀胱癌に関与する遺伝子には共通点があることが窺える。よって、今後、この共通点を頼りに新たな診断法、治療法、予防法を開発する研究が進み、泌尿器科診療が進化を遂げることを期待している。そして、早期発見・早期治療が実現し、膀胱癌を克服するヒトや犬猫が増えることを願っている。

膀胱癌サンプルの他に、臨床上健康な個体の膀胱サンプルでも遺伝子を解析したとのことです。

 

参考ページ:

https://mrcvs.co.uk/en/news/22835/Scientists-identify-bladder-cancer-genes-in-cats-and-dogs


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