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クリプトコッカス症によって中枢神経に症状を呈した犬猫の転帰を調べた研究

投稿者:武井 昭紘

クリプトコッカス症は、文字通りクリプトコッカス属の真菌を病原体としており、同菌を保有した鳥の糞で汚染された土壌や、腐敗した木材に存在する同菌が粉塵となって経気道、あるいは、経皮的に感染する病気である。また、犬猫が感染すると、鼻汁、くしゃみ、鼻梁の腫脹といった呼吸器症状、紅斑、びらん、潰瘍、肉芽腫といった皮膚症状、沈うつ、発作、麻痺といった中枢神経の症状など多様な病態を示すことが知られている。そのため、クリプトコッカス症を抱えた動物の転帰を把握し、その転帰を良いものにするべく治療法を見直すことが重要だと考えられるのだ。

 

冒頭のような背景の中、オーストラリアの大学および動物病院らは、過去21年間(2000年〜2020年)において中枢神経の症状を伴ったクリプトコッカス症と診断された犬猫の診療記録を解析する研究を行った。すると、犬31例、猫19例の計50例に及ぶデータが集積され、以下に示す事項が明らかになったという。

◆ クリプトコッカス症によって中枢神経に症状を呈した犬猫のデータ◆
・神経症状以外の症状は副鼻腔周辺の病変と関連していた
・前脳や前庭(小脳を含む)に病変が形成されることが多かった
・犬のCSFでは細胞数が増えていた(好酸球が目立つ)
・78%の症例が抗真菌薬を投与されていた
・治療を受けた犬の生存期間は679日(中央値)であった
・治療を受けた猫の生存期間は1678日であった
・初診時やCSF採取時に精神状態が異常であった症例の生存期間は短くなっていた
・確定診断が下る前にグルココルチコイドを投与された犬の生存期間は短くなっていた
・1種類の抗真菌薬を投与された犬の生存期間は2種類以上投与された犬より短かった

 

上記のことから、治療を受けると予後は良好なようで、犬で1.8年、猫で4.5年の生存期間が望めることが窺える。また、ステロイドや抗真菌薬の使用状況が生存期間を左右することも分かる。よって、今後、検査・診断・治療の流れについて議論され、犬猫のクリプトコッカス症の予後が「より良い」ものになることを願っている。

初診時の年齢は猫よりも犬で若かったとのことです。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36434766/


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