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犬における手術前後の血清中および唾液中のα-アミラーゼ濃度を測定した研究

投稿者:武井 昭紘

犬の唾液に含まれる様々な成分は、血液検査項目と同様に、彼らの体で起きている異変を検出するマーカーとして有用であると言われている。その中でも、唾液中α-アミラーゼ(①)およびコルチゾール(②)濃度は、ある研究によると、病気を抱えている犬のストレスレベルを表すマーカーとして期待されているようなのだ。そこで、疑問が一つ浮かぶ。手術を要する、つまり体の何処かに違和感や痛みを感じている犬において、①②はどのような値を示すのだろうか。それを明らかにすることは、周術期の疼痛管理を進化させるキカッケになるものと思われる。

冒頭のような背景の中、韓国の獣医科大学らは、整形外科あるいは軟部外科の手術を受けた犬35匹を対象にして、彼らの①②および血清中α-アミラーゼ濃度(③)、コルチゾール濃度(④)、そして疼痛スコア(the short form of the Glasgow Composite Measure Pain Scale、CMPS-SF)を測定する研究を行った。すると、疼痛スコアは①と正の相関関係にあるとともに、術前と比べて術後7日時点での④と疼痛スコアは有意に低下することが判明したという。また、疼痛スコアに応じて犬を2群(疼痛が強いグループと低いグループ)に分けると、疼痛が強いグループの術後で①③④および疼痛スコアが有意に低下することが確認されたとのことである。

上記のことから、①は手術を必要とする犬、とくに疼痛が強い症例のストレスを評価するマーカーになり得ることが窺える。よって、今後、外科手術の効果(どれ程に痛みを取り去っているのか)を評価するマーカーとして①の測定方法が確立され、それを「高い精度で」可能にする検査機器やキットが一般の動物病院に普及することを期待している。

血清中のα-アミラーゼやコルチゾールを測定する手技に比べて、①の測定は「非侵襲的」であるので、既に痛みを感じている犬に優しい検査として普及することも願います。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35027050/


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