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ICUに入院した猫の血清中心筋トロポニンI濃度を測定した研究

投稿者:武井 昭紘

血清中に含まれる心筋トロポニンI(cardiac troponin I、cTnI)は壊死した心筋細胞から放出される物質で、犬の予後を示唆する、つまり死の転帰の可能性を把握するマーカーの一つとされている。そこで、疑問浮かぶ。cTnIは、猫の予後も示唆するマーカーなのだろうか。

 

冒頭のような背景の中、スウェーデンおよびデンマークの大学は、大学付属動物病院を訪れた①臨床上健康な猫13匹と②ICUに入院した猫119匹を対象に、彼らの病状(APPLEスコア)、血清中cTnI濃度、血清中SAA濃度を測定する研究を行った。なお、同研究における②の生死(安楽死を含む)は入院から28日目、90日目に確認されている。すると、以下に示す事項が明らかになったという。

◆ICUに入院した猫の予後◆
・①に比べて②のcTnIは有意に高かった
・心臓の構造的異常を持つ、または、SAAが5mg/Lをオーバーの②でcTnIがより高かった
・入院中に死亡した割合は29%であった
・しかしAPPLEスコア、cTnI、SAAいずれも予後を示唆するマーカーになり得なかった

 

上記のことから、ICUに入院するレベルで重症の猫において、血清中cTnI濃度は予後判定に利用できないことが窺える。よって、今後、cTnIの他にヒトや犬の予後を判定できるマーカーを対象にして、同様の研究が行われ、猫の予後判定マーカーが確立されるとともに、その予後を改善する方法について議論が尽くされることに期待している。

各項目の具体的な測定値は、リンク先の文献をご参照下さい。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36708236/


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