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免疫介在性血小板減少症と診断された犬に対するトラネキサム酸の効果を調べた研究

投稿者:武井 昭紘

免疫介在性血小板減少症(primary immune thrombocytopenia、ITP)は、文字通り免疫機能の異常によって血小板が減少する現象で、その減少を喰い止めることは勿論のこと、破綻した止血機構のサポートをすることが治療の中心となる犬の病気である。そのため、止血剤の効果を把握し、使用の是非について議論する必要があるのだ。

 

冒頭のような背景の中、イギリスの動物病院らは、ITPを発症し、コルチコステロイド、ビンクリスチン(単回投与)、オメプラゾールで治療された犬10匹を対象にして、トラネキサム酸の効果を検証する研究を行った。なお、同研究では、罹患犬を①コントロール群に6匹、②トラネキサム酸投与(20mg/kg IV)群に4匹と2つのグループに分け、彼らの診療記録が比較されている。すると、以下に示す事項が明らかになったという。

◆ITPの治療を受けている犬に対するトラネキサム酸の効果◆
・寛解するまでの期間は①で6日、②で5日であった(統計学的な有意差は無い)
・①②それぞれに寛解しなかった犬が1匹居た
・出血の程度を表すスコアは両群で差が無かった
・輸血量は①で9.72 ml/kg、②で37.5 ml/kgであった(統計学的な有意差は無い)
・②の75%がトラネキサム酸の投与15分後に嘔吐した

 

上記のことから、両群が寛解に至る期間も、出血に関するスコアも、輸血量も有意差が無いことが分かる。つまり、トラネキサム酸に効果は認められないと言えるのだ。また、同薬剤の静脈投与には嘔吐のリスクがあることも窺える。よって、ITPの犬にはトラネキサム酸を投与する必要はないと考えられる(トラネキサム酸の経口投与の可能性を探ることは一つの選択肢かも知れない)。

嘔吐をした症例におけるトラネキサム酸の投与量は、10〜15mg/kg IVに減量されたとのことです。

 

参考ページ:

https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fvets.2023.946127/full


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