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良好にコントロールされていた発作の頻度が療法食の変更を機に増えた犬の1例

投稿者:武井 昭紘

ドイツ原産のジャーマン・スピッツ(9歳齢、オス)が食餌管理のアドバイスを求めて、ベルギーのゲント大学を訪れた。彼は、尿石症(シュウ酸Ca結石)、膵炎、肥満を患っていた。そして、7歳の頃から「てんかん」を疑う発作を認めており、フェノバルビタールと臭化カリウムで良好な経過を辿っていた。大学では肥満に重点が置かれ、減量プログラムが開始した。減量は成功と思われた矢先(10ヵ月後)、彼は週に3回もの発作を呈するようになってしまった。一体、何が起きたのだろうか。

発作の動画、神経症状の特徴から発作性ジスキネジアという運動障害(四肢や頭頸部に突発的な筋緊張亢進)と診断された。ここで、担当の獣医師は食餌に注目した。グルテンの摂取が原因と見立てて、グルテンフリーで且つ加水分解タンパク質のフードを食べさせるようにオーナーに指示を出した。以降3ヵ月、そのフード以外の食べ物を与えた日、抗てんかん薬を減量した日を除いて、良好な経過であったという。そして、最終的に抗てんかん薬を中止するまでに回復した。その後の4ヵ月、幸いなことに彼に症状は認められなかった。

症例を発表した大学は述べる。発作性ジスキネジアとグルテンの関連性は不明だと。しかし、抗てんかん薬を中止してグルテンフリーのフードを与えたら発作が治ったことは事実だとも訴える。果たして、発作性ジスキネジアと診断された犬のうち、グルテンに限ることなく食餌療法が有効な症例は他にも存在するのか。今後、大規模な臨床研究が計画され、「てんかん」に類似した症状を現す当該疾患が深く理解されるようになることを期待している。

本症例の特筆すべき点を挙げるとすれば、グルテンフリーのフードであれば何でも良いとはならなかったことです。一時期、グルテンフリー且つ加水分解タンパク質のフードを、グルテンフリーの高脂肪食に変更したそうですが、その時に嘔吐と神経症状が現れたそうです(フードを戻したら症状は解消されたとのこと)。

 

参考ページ:

https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fvets.2023.1054251/full


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