7歳齢、去勢オスのポメラニアンが右側胸部から聴取できる雑音を主訴に韓国の動物病院を訪れた。胸部X検査では心肥大、とりわけ右心房の拡大を、心エコー図検査ではバルサルバ洞から右心房へと延びるトンネル状の構造物を認めたという。精査のため、CT検査へと進む。果たして、このトンネルは何を意味しているのだろうか。
トンネルは大動脈から始まり、心基底部の方向へ延び、右心室壁をつたって右心房に続いていた。いわばシャント血管の様相を呈していたのだ。大動脈と右心房が繋がっていること。これが雑音の発生源だった。治療は行われず、1年間の経過観察となった。左心室への負荷、心収縮力の低下が認められるも、いずれも軽度であった。
症例を報告した韓国の全北大学校および動物病院は、犬の右側胸部から雑音が聴取できた場合は、その鑑別リストに本病態(aorta-right atrial tunnel)を追加するべきだと述べる。読者の皆様が担当する症例に、今回紹介した臨床検査所見を有する犬は居るだろうか。もし、居るならば、心臓や大動脈の各所を繋ぐ血管の存在を探ることをお薦めする。
参考ページ:
https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fvets.2023.1160390/full