画像診断で読影する気管は正常か、あるいは、異常か。そこには、読影者の臨床経験もさることながら、主観も混ざることになる。しかし、それでは客観的な根拠に乏しくなる。つまり、気管に纏わる数値の測定方法を定義し、基準値(参照値)を設定することが獣医学の課題なのだ。
冒頭のような背景の中、ベルン大学は、一般家庭で飼育されている猫15匹のCT画像を解析して、気管の長さを測定する研究を行った。なお、同研究には、短頭種ではない猫が参加している。すると、以下に示す事項が明らかになったという。
◆短頭種ではない猫の気管に纏わる数値◆
・平均の長さは125.13±14.41mmであった
・オスはメスよりも大きな数値となった
・①喉頭部に近い気管と比べて②気管全長の中間地点の横径は0.94mm太かった
・②と比べて③気管分岐部に近い気管の横径は1.38mm細かった
・①に比べて②の垂直径は1.16mm細かった
・②に比べて③の垂直径は0.06mm太かった
・①と③を除いて気管の横断面は全体的に楕円形であった
上記のことから、短頭種ではない猫の気管に纏わる数値は一定範囲に収まっておりことが窺え、基準値が設定できることが分かる。よって、今後、呼吸器疾患を抱えた猫の気管についても同様の研究が進められ、客観的データが蓄積されることを期待している。また、これらの測定値を基にX線検査による画像診断が客観化され、猫の呼吸器科診療は発展することを願っている。
参考ページ:
https://journals.sagepub.com/doi/full/10.1177/1098612X231158578