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運動をキッカケにして四肢の筋肉が脱力してしまうコッカプーの1例

投稿者:武井 昭紘

9歳齢、去勢オスのコッカプーが運動をキッカケして四肢の筋肉が脱力する問題を抱えて、イギリスの動物病院を訪れた。どうやら、病状は急性で、且つ、進行性のようだった。精査が行われた。すると、胸腺腫と胆管癌が発見された。果たして、これらの病気は、四肢の筋肉が脱力することと関連しているのだろうか。あるいは、重大な病気が複数重なっているだけなのだろうか。

本症例は、全身性の重症筋無力症と診断された。血清中に含まれる抗アセチルコリン受容体抗体を継続的に測定しつつ、臭化ピリドスチグミンが投与された。無論、胸腺腫と胆管癌も治療対象となった。重症筋無力症の症状をコントロールしたのちに、両病巣は外科的に切除された。臭化ピリドスチグミンが中止できる臨床的な寛解までに251日(8ヶ月強)、抗アセチルコリン受容体抗体の濃度が正常化する免疫学的な寛解までに566日(18ヵ月強)を要した。その約6ヶ月後の再診における神経学的検査は正常、再発は認められなかったという。

症例を発表したノッティンガム大学およびイギリスの動物病院らは、本症例を「胸腺腫に伴う重症筋無力症」と断定し、当該疾患で抗アセチルコリン受容体抗体の濃度を経時的に追跡した報告は初めてだと述べる。また、臨床症状が改善したタイミングと抗アセチルコリン受容体抗体の濃度が正常化するタイミングに10ヶ月もの間があったこたに注目する。これは他の類似症例でも起きることなのだらうか。今後、胸腺腫に伴う重症筋無力症のデータが蓄積され、臭化ピリドスチグミンなどの薬物療法の期間について議論されることに期待している。

本症例は、両目の瞬きも不自然であったとのことです。

 

参考ページ:

https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fvets.2023.1124702/full


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