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生後8ヶ月の子猫のシッポに認められた腫瘤の正体

投稿者:武井 昭紘

まだ去勢手術を受けていない8ヶ月齢のオス猫の尾には、生来の腫瘤があった。そして、その腫瘤の特筆すべきポイントは「歯」であった。腫瘤の一部が線状に裂け、そこから歯を連想する構造物が姿を覗かせていたのだ。どうやら、近々で腫瘤が破裂したようだった。果たして、彼の身に何が起きているのだろうか。

手術によって尾は切断された。外科的に切除された腫瘤を肉眼的に観察すると、歯のみならず被毛や骨らしき構造物を含んでいることが分かった。更に、病理組織学的な分析により、毛包と付属器、神経、歯、筋肉、脂肪、骨に加えてリンパ管も存在していることが判明した。発生学的に表現すれば、それは「胚」を構成しているように見えたという。

症例報告を行ったタイおよびアメリカの大学らは、この腫瘤を、様々な胚葉由来の成熟した組織から構成される「成熟奇形腫」と位置付けた。また、病理組織学的に完全に切除できなかったことが惜しいと述べる。しかし幸いなことに、手術から2年経っても腫瘤の再発はない。症例は健康そのものだとのことだ。万が一、診察を担当する子猫の尾に腫瘤があった場合は、同様の現象が起きている可能性がある。後学のために、子猫の生活の質を維持するためにも、腫瘤を切除することを検討してみても良いかも知れない。

腫瘤の外観は、リンク先の論文でご参照下さい。

 

参考ページ:

https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fvets.2022.1003673/full


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