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発作と測定過大を呈した5歳齢のマルチーズに起きた脳の異変

投稿者:武井 昭紘

マルチーズ(5歳齢、オス)が3日前から始まった強直性の発作と測定過大を主訴に、韓国の忠北大学を訪れた。本症例の病歴に神経系疾患は無く、全身麻酔をされた過去もなかった。また、神経学的検査で小脳性運動失調を認めるも、血液検査では異常は確認できなかった。これを受け、全身麻酔は可能と判断された。MRI検査に進む。小脳と頚髄に病変があった。そのパターンは犬で報告されたことがないのだが、ヒトでは腫瘍の転移を示唆するものとされていた。つまり、原発の腫瘍を探索する必要が出てきたのだ。

各組織の糖の取り込み状況を可視化することで腫瘍の存在を証明するPET-CT検査が実施された。大脳、脳幹、小脳における取り込みは、頚髄、僧帽筋、両眼のそれよりも低かった。脳に転移した腫瘍での取り込みが増えるどころか、むしろ彼の脳は活動していないように見えたという。検査終了後、麻酔と切ると昏睡状態に陥った。それから24時間、自発呼吸も脳幹反射も回復しなかった。人工呼吸器から抜け出せない事態に、オーナーは安楽死を決断した。

同大学は、糖の取り込みが全くない脳を念頭に置き、本症例に「脳死」が起きていたと結論付けた。果たして、脳死の原因とは何であったのだろうか。そして、同様の現象は他の犬にも発生し得ることなのだろうか。今後、犬の脳死に関するデータが集積され、その疫学が明らかになることを期待している。

本症例の剖検は行われておりません。

 

参考ページ:

https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fvets.2022.902475/full


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