遺伝子の発現を調節する因子とされるマイクロRNA(miRNA)は、血液や尿の中に浮遊している物質で、現在、人医療および獣医療における様々疾患を診断するための有用なマーカーになり得るとして注目を浴びている。一方で、話を変えるが、犬猫が罹患する泌尿器疾患の一つ、腎盂腎炎を診断する手段は非常に制限されているのが現状で、尿サンプルの培養で「類推」し、全ての症例に適応できるとは決して言えない腎生検で確定することが一般的となっている。
そこで、コペンハーゲン大学は、以下に示す5つのグループに属する猫を対象にして、尿中に含まれる20種類以上のmiRNAの定量をする研究を行った。すると、これらのグループから8種類のmiRNAが検出され、その中でも、miRNA-16という因子が②で有意にアップレギュレーションしていることが判明したとのことである。
◆本研究に供した5つのグループ◆
①臨床上健康な猫
②腎盂腎炎の猫
③慢性腎臓病の猫
④細菌尿(無症状)を呈する猫
➄尿閉を起こした猫
上記のことから、尿サンプルを採取できれば、今回紹介した研究の手法によって、多くの症例の中から③腎盂腎炎を特異的に認識できると考えられる。したがって、尿中miRNA-16検出法が腎盂腎炎の診断マーカーとして商業化されるとともに、当該疾患で苦しむ猫が一般の動物病院で早期に発見され、適切な治療を受けられる未来が訪れることを願っている。
参考ページ:
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/31721298