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多中心型リンパ腫の犬におけるmiRNA-122の発現量を調査した研究

投稿者:武井 昭紘

犬の多中型リンパ腫は、疼痛を示さないリンパ節の腫大が全身性に発生するリンパ系の病気で、肝臓・脾臓の腫大や腹水の貯留を伴って腹部膨満の症状を呈することもある腫瘍性疾患である。そのため、臨床検査(X線検査、超音波検査)を実施して、全身のリンパ節および腹腔内を精査するのだが、どの臓器が「どれくらい」の障害を受けているかについて、数値を用いて客観的に評価できる診断マーカーは、いまだ確立されていない。

そのような背景の中、エジプトのカイロ大学は、肝臓特異的に発現しているmicroRNA-122(miRNA-122)に着目して、①多中心型リンパ腫の犬におけるmiRNA-122の発現量を、②臨床上健康な犬と比べる研究を行った。なお、人医療では、miRNA-122は癌細胞の増殖に抑制的な作用を持つとされ、肝癌を罹患した患者にて発現が低下しているとの報告もある遺伝子調節因子で、研究の結果、①では、②の9倍ものmiRNA-122が検出されることが明らかになったとのことである。

上記のことから、ヒトの肝癌とは異なり、犬の多中型リンパ腫では、miRNA-122の発現量が上昇することが窺える。よって、リンパ腫に限ることなく、犬の肝臓に起きる様々な疾患でのmiRNA-122の発現レベルを調査することが、今後、同遺伝子の臨床的な有用性を計る上で、大変に重要なことであると考えられる。そして、晴れて、その有用性が認められ、miRNA-122が診断マーカーの一つとして、小動物臨床に浸透していくことに期待している。

肝臓疾患それぞれにおけるmiRNA-122の発現量が決定すれば、肝臓の病気全般に対する鑑別診断マーカーの確立が叶うかも知れません。

 

参考ページ:

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/31473888


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