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症状を呈する前の僧帽弁粘液腫様変性を抱える犬を特定するバイオマーカーの開発

投稿者:武井 昭紘

アメリカのタフツ大学の研究によると、血液中のエキソソーム(細胞間で伝達される袋状の構造)に含まれる遺伝子調節因子であるマイクロRNAの発現状況は、臨床上健康な犬、無症状の僧帽弁逆流症の犬、症状を呈した僧帽弁逆流症の犬でそれぞれ異なるという。つまり、このマイクロRNAは、僧帽弁逆流症の診断および病態把握に利用できると考えられるのだ。では実際のところ、心臓病の発生が多いとされるキャバリア・キング・チャールズ・スパニエル
(キャバリア)の循環器診療にマイクロRNAは利用できるのだろうか。

 

冒頭のような背景の中、イタリアの大学および研究所らはキャバリア44匹を対象にして、彼らの血液中に含まれるマイクロRNA(miR-1-3p、miR30b-5p、およびmiR-128-3p)を測定する研究を行った。なお、同研究には、①ACVIMが提唱するステージAのキャバリア11匹、②ステージB1で3歳未満のキャバリア11匹、③ステージB1で3歳~7歳のキャバリア11匹、④ステージB1で7歳を過ぎたキャバリア11匹が参加している。すると、以下に示す事項が明らかになったという。

◆キャバリアの血液に含まれるマイクロRNA◆
・miR30b-5pは①よりも②~④で有意に高かった
・その量は②で①の2.3倍、③で2.2倍、④で2.7倍に達した
・この差をグラフにすると①と②~④を区別できることが分かった

 

上記のことから、miR30b-5pは、臨床上健康なキャバリアと僧帽弁逆流症に関連した臨床検査所見が見付かるキャバリアと判別するバイオマーカーとして有用だと考えられる。よって、今後、②~④を振り分けられるマイクロRNAを特定する研究が進み、ステージ分類の客観化と、そのステージに応じた治療方針の早期決定・変更が実現することを期待している。

マイクロRNAはリアルタイムPCRで検出されております。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35816500/


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