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犬の慢性炎症性腸疾患と消化器の悪性腫瘍を鑑別するマイクロRNAに関する研究

投稿者:武井 昭紘

近年、マイクロRNAは、犬のアトピー性皮膚炎および外耳炎の診断、僧帽弁疾患の診断や病態把握、多中心型リンパ腫の予後判定などに有用だと期待されている物質である。そのため、同物質は、列挙したもの以外の様々な疾患の診断・治療・予後判定に応用できるのではないかと期待されているのだ。

 

冒頭のような背景の中、ヨーロッパの獣医科大学らは、犬の糞便または血清中に含まれるマイクロRNAに着目して、犬の消化器系に発生する悪性腫瘍(gastrointestinal cancer、GIC)と、慢性経過を辿る炎症性腸疾患(chronic inflammatory enteropathy、CIE)を鑑別できるバイオマーカーの開発を試みる研究を行った。なお、同研究では、マイクロRNAをリアルタイムPCRで増幅し、その配列を解析している。すると、①GICの犬24例、②CIEの犬10例、臨床上健康な犬10例のデータが集積され、以下に示す事項が明らかになったという。

◆犬のGICとCIEを鑑別するマイクロRNA◆
・糞便中のマイクロRNAではmiR-451、miR-223、miR-27aの精度が高かった(感度約82~91%、特異度80~100%)
・血清中のマイクロRNAではmiR-20b、miR-148a-3p、miR-652の精度が高かった(感度約86~91%、特異度90%)
・糞便中に含まれるmiR-451とmiR-223を組み合わせると精度が上がった(感度約96%、特異度90%)

 

上記のことから、マイクロRNAは犬のGICとCIEを鑑別する有用なバイオマーカーだと言える。よって、今後、両疾患の早期診断、そして特にGICの早期治療を実現する検査パネルが開発され、1匹でも多くGICの犬の命が救われ、CIEの犬の生活の質が改善することを願っている。

感度および特異度の詳細はリンク先の論文をご参照下さい。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36120988/


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