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実験的にパルボウイルスに感染した4日目に抗体医薬で治療された犬の経過と死亡率

投稿者:武井 昭紘

犬のパルボウイルス感染症は致死的経過を辿ることのある危険な病気である。そのため治療を要するのだが、ウイルスの活動を直接的に抑え込む有効な治療法は無く、感染個体の免疫機能がウイルスに打ち勝つまで対症療法を続けるしかないのが現状である。一方、話は変わるが、近年において抗体医薬が注目されている。治療ターゲットに対するモノクローナル抗体がアトピー性皮膚炎、変形性関節症、感染症に応用され始めているのだ。そこで、疑問が浮かぶ。犬のパルボウイルス感染症にも抗体医薬は適応できるのだろうか。

 

冒頭のような背景の中、ウィスコンシン大学らは、パルボウイルスに実現的に感染したビーグルの子犬(8週齢)に対するモノクローナル抗体の効果を検証する研究を行った。なお、同研究では、ビーグルを①治療群と②コントロール群の2に分け、①にモノクローナル抗体、②に生理食塩水が静脈内投与(単回)されている。すると、以下に示す事項が明らかになったという。

◆パルボウイルス感染症に対するモノクローナル抗体の効果◆
・②の死亡率は57%であった
・①の死亡率は0%であった
・①では発熱、嘔吐、下痢、リンパ球の減少、糞便中へのウイルスの排出が軽減した
・①②ともにIgMの応答があった

 

上記のことから、モノクローナル抗体は犬のパルボウイルス感染症に有効だと考えられる。また、①においてIgMの産生がなされていることから、同薬剤は免疫応答に影響を及ぼさないことが窺える。よって、今後、パルボウイルス感染症の犠牲となる犬(子犬)が世界的にゼロになるように、モノクローナル抗体が普及していくことを願っている。

①は21匹、②は7匹で構成されていたとのことです。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38295522/


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