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ヒトへの攻撃性が強く異嗜も認められたアラビアンマウの1例

投稿者:武井 昭紘

1歳2ヶ月齢、不妊メスのアラビアンマウが、アラブ首長国連邦の首都アブダビに拠点を構える動物病院を訪れた。何でも、2週間後にアイルランドに引っ越しをする予定とのことで、愛猫も連れて行きたいという希望であったようだ。しかし、オーナーには悩み事があった。彼女が問題行動を繰り返していたのである。自宅を訪問する人物に対して攻撃的となり、オーナーの手足に飛びつき咬む、引っ掻くなど暴れたい放題。おまけに、靴下やタオルなどの羊毛・布製品を飲み込むトラブルを起こしていた。毎日。時には1日に何度も。果たして、彼女の身に何があったのだろうか。

このままでは引っ越しどころではない。そこで、引っ越しの準備と平行して、彼女の問題行動を治療が開始された。α-カソゼピン製剤(ジルケーン)とガバペンチンが投与され、アイルランドへ飛び立った。すると、問題行動が悪化。特に、誤飲・誤食は最悪の場合、緊急の外科手術に迫られる。次の手として、長時間型の向精神薬が提案される。当初オーナーは拒否するも、解決しない問題行動の解決のために獣医師との議論の末、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(selective serotonin reuptake inhibitor、SSRI)、フルオキセチンの投与を決断する。投与から6週後、問題行動は大幅に改善した。

犬も猫も、ヒトの変化を感じ取る。おそらく、本症例も海外への引っ越しという大きなイベントに変化を感じ取ったのだろう。彼女は彼女なりに不安や恐怖と闘っていたのかも知れない。その結果として、問題行動が表面化した。そして、それはSSRIの投与で解消された。もし仮に、海外でないにしても引っ越しを契機に問題行動を起こした猫を飼っている場合は、SSRIによる治療を一度は検討してみることをお薦めする。

各薬剤の用量につきましては、リンク先の文献をご参照下さい。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37441538/


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