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放し飼いの犬に効率良く狂犬病ワクチンを接種する手法を検証した研究

投稿者:武井 昭紘

年間に約60000人の犠牲者を出す狂犬病の脅威を鑑み、世界保健機構(WHO)は「2030年計画」と称して、2030年までに狂犬病を撲滅する防疫システムの構築を試みている。しかし、犬を放し飼い(フリーローミング)にしている地域でのワクチン接種に頭を悩ませている現状があり、効率良く、着実に、予防医療サービスの提供を実現する手法の確立が急務となっている。

そこで、エンジンバラ大学らは、インド南部でアラビア海に面したゴアで、ワクチン接種が済んでいない、且つ、フリローミングされている犬を対象にして、経口型狂犬病ワクチンの接種方法を検討する研究を行った。なお、同研究では、①ネットで供試犬を捕縛して投与する群と②餌とワクチンを混ぜて供試犬の生活圏に散布する群における費用対効果を比較しており、以下に示すような結果が得られたとのことである。

<①および②の費用対効果に関する相違点>
・②によって1日にワクチン接種できる頭数は①の約4倍
・②を実施するために掛かる1日の費用およびスタッフの数は①の約4分の1
・最終的に②では対象になった犬の80%に接種ができる(①では60%台)

上記のことから、①に比べて、②の費用対効果が非常に優れていることが窺え、2030年計画の前に立ちはだかる「放し飼い」という壁を乗り越えることヒントが示されたものと思われる。よって、将来的に、ゴアと同様の問題を抱える世界各地にて直ちに実践できるように、今回紹介した接種方法(餌とワクチンを混ぜる手法)がガイドライン化されることに期待している。

中国などで、狂犬病の蔓延の一翼をになっている猫への狂犬病ワクチン接種方法としても、本研究の手法が活用されていくことを願っております。

 

参考ページ:

https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2590136219300166


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