狂犬病は、多様な動物種(ヒト、犬猫を含む)に感染し、致死的な神経症状を認める危険度の高いウイルス性疾患である。そのため、日本を含めた世界各地で、犬への狂犬病ワクチン接種による予防医療が推進されている。しかし、フリーローミング(放し飼い)や野生化した犬が多い地域や国では、予防注射を目的として、「犬を一時的に捕える」こと自体が困難となる場合がある。
そこで、カザフスタンの研究機関(Research Institute for Biological Safety Problems)は、経口型の狂犬病ワクチンの効果について検証を行った。同研究では、野生化した犬が対象となり、経口ワクチンを接種してから180日後までの抗体価が測定された。すると、期間中の抗体価は、0.59〜1.37 IU/mLの範囲内に収まるという結果が得られたとのことで、動物の輸出入を統括する国際獣疫事務局の基準である0.5 IU/mL以上をクリアしていることが明らかとなった。加えて、①オオカミおよびコサックキヅネに経口ワクチンを投与した場合も接種後60日までは0.5 IU/mL以上の抗体価が得られること、②通常の10倍量の経口ワクチンを投与した動物(犬、オオカミ、キツネ)において有害事象が認められなかったことも確認されている。
上記のことから、各国の犬の飼育環境(常にヒトと行動をともにするのか、日常的に野外を自由に動き回ることができるのか、完全に野生化しているかなど)や野生動物の分布に併せて、「経口型」および「注射型」の狂犬病ワクチンを使い分けられるように、国際的なガイドラインを作成していくことが重要であると考えられる。
参考ページ:
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/m/pubmed/28766059/?i=9&from=dog